2023年12月19日 神道の諡について
神道は、日本古来の伝統的な信仰であり、民俗信仰、自然信仰、祖霊信仰が基盤となっています。各地で伝承される葬送儀礼はこれらの習俗に仏教の影響を受け、明治時代に「神葬祭」として整備されました。
神道の葬儀においては、戒名に相当するものが存在し、「諡(おくりな)」と呼ばれますが、仏教の戒名とは異なる意味合いや付け方があります。
諡(おくりな)の意味
神道において諡は故人の死後に付けられる名前を指し、生前の徳や行いを称える意味が込められています。
人は神の子と見なされ生まれてから役割を果たし、死後には諡を付けて神々のいる世界に戻ると考えられており、この諡は故人が子孫を見守る守護神としての役割も担います。
一方で仏教の戒名は死後に仏の弟子としての名前を得るものであり、これは神道とは異なる考え方です。
諡の付け方
諡は生前の名前の後に加えられ、年齢や性別によって異なります。例えば特定の年齢ごとに以下のような諡が付けられます。
3歳まで:[男性] 嬰児(みどりご)、[女性] 嬰児(みどりご)
6歳まで:[男性] 稚児(ちご、わかいらつこ)、[女性] 稚児(ちご、わかいらつめ)
15歳まで:[男性] 童男(わらべ)、[女性] 童女(わらめ)
19歳まで:[男性] 彦、郎子彦(ひこ)、[女性] 姫(ひめ)
40歳まで:[男性] 郎男(いらつお)、[女性] 郎女(いらつめ)
70歳まで:[男性] 大人(うし)、[女性] 刀自(とじ)
70歳超:[男性] 翁(おきな)、[女性] 媼(おうな)
これに「命(みこと)」を加えて諡が完成します。
例えば72歳の男性なら「○○翁命(○○おきなのみこと)」といった具体的な付け方があります。ただしこれは年齢ごとに厳格に守る必要はなく、最近では簡略化される傾向も見られます。
諡を頼む相手と費用
諡は特定の誰かに頼む必要はなく、戒名とは異なり布施(値段)も必要ありません。神道のお墓である奥津城に名前を刻む際や、霊璽に諡を加える際には省略されないことが一般的です。諡は故人の尊厳を守り、先祖の霊を敬う重要な要素となります。
神道と仏教の葬儀には死生観の違いが見られますが、先祖への敬意や願いは共通しています。
神道の諡や仏教の戒名が、故人とその家族にとって大切なものであることには変わりありません。