2022年04月09日 忌中と喪中-それぞれの意味と違い
忌中と喪中、どちらも普通に聞かれる言葉ですが、その違い・意味合いをちゃんと理解されていますか?
どちらも同じように感じますが、その意味合いは大きく異なります。
忌中は四十九日まで
仏教では一般的にご親族が亡くなられてから四十九日までの間が忌中となり、対象は故人の血族・配偶者・婚姻で生じた親族までとなります。
多くの場合執り行われる仏教形式のご葬儀、このご葬儀を終えたご遺族は四十九日までの間が忌中となります。
仏教では故人様のあの世での行き先が決まる最終判断が49日目とされていることから忌中の期間の目安となっています。しかしながらすべての宗派が同じ考えではなく、例えば浄土真宗では亡くなった後すぐに仏様になるという教えから忌中の概念がないそうです。
また仏教ではないですが、神道ではこの期間は穢れがつくと考えられており、世間に出ることを慎むべきとされています。
忌中の習わし-忌中札
昔は忌中の間に貼られる忌中札がよくみられました。
近年ではほとんど見られなくなりましたが忌中札とは、親族が逝去した際の穢れを他に移さないようにと玄関に付ける張り紙のことです。
半紙の縁に黒い太枠を描き中心に忌中と書きます。
こうした習わし/知識を理解している方が減っていることや、忌中札を貼ると留守が多くなることが解るので、防犯を目的として札を貼らないご家庭が増えています。
また首都圏など大都市では近所との関わりが減っており、忌中を知らせる必要がないことも忌中札が減っている理由の一つでしょう。
宗教ごとの忌中(忌中の相当する期間等)への考え方の違い
仏教
仏教では死に対する考え方が宗教・宗派よって異なり、忌中や喪中の考え方・在り方も異なります。
死によって存命中の苦痛から解き放たれて仏になる、または他の世界に転生するというのが仏教の基本の考え方です。
忌中はその過程での通過点であり、四十九日の法要までの期間とされています。
故人様のあの世での幸せ=冥福を祈る「追善供養」として、死後7日ごとの法要を四十九日まで続けるのが仏教の基本的な四十九日までのご供養ですが、現代では初七日法要(近年初七日法要は「繰り上げ初七日法要」とし告別式と同時に済ませるようになってきています)と四十九日法要のみ行う場合がほとんどです。
前述していますが忌中の考え方についてすべての仏教宗派が同じではなく、浄土真宗ではあの世に旅立った人はすぐに仏になるとされているので忌中自体がありません。
神道
神道においては”死は穢れ”と捉えられています。死そのものだけではなく遺族が悲しみに暮れて落ち込んでしまうことも穢れに含まれると考えられています。(仏教で言う)忌中の期間は50日間。
神道では死後50日は霊として留まり五十日祭を終えてから、遺族の守護神に変わると考えられています。昔は五十日祭の翌日に行う清祓いの儀までが忌中でしたが、現代は五十日祭とともにこの儀をおこなうようになりました。
清祓いの儀とは故人様が逝去した際に貼った神棚の白紙を取ることを指します。
キリスト教
キリスト教の考えでは「死は一時的な別れで亡くなった後は天国で再会できる」とされており、忌という考えがありません。
しかしながら日本では日本の習わしに沿いカトリックは死後30日目におこなう追悼ミサ、プロテスタントは死後1ヵ月目に迎える召天記念日までを忌中としています。
無宗教などの場合
ここ数年で少しずつみられるようになった無宗教での葬儀や火葬のみで済ませお墓も合葬墓に埋葬して済ませるプランを利用するご家族の場合、宗教的な観点がないので忌中という概念が当てはまりません。
ただ親族やご近所など関係性のある方への建前、と言うと言い過ぎかもしれませんが仏式のものを採り入れ50日くらいまでは忌中と同様の言動を心掛けた方が周囲の方との関係性を損なわずに済むかもしれません。
忌中にやっておくべきこと
忌中は行政機関等の手続きをはじめやらなければいけない事が多くあります。
行政機関手続きや故人様が会員となられていた様々な会社やサービスの手続き、これらは平日でしかできないものが多いので忌引きの間にやっておいた方が後々の手間がかからなくなります。また、こちらは四十九日を過ぎても問題はありませんが、遺品の整理も行わなければなりません。これは重労働となることもあるので選別だけして専門の業者に処分等を依頼するのも一つの方法でしょう。
こうした生活上の必要事項の他、家の中に神棚がある場合は半紙やお札を貼り神棚封じを行います。
また昔のように世間との交わりを絶ち喪服を着て精進料理を食べ静かに過ごすことはほとんどなくなりましたが、お祝い事(結婚式なども)は避けるのが一般的です。ただ現代では昔ほど仏教儀礼に拘らなくなっていますので、親族で結婚式の予定がありましたら親族内で相談して決めるのが良いでしょう。
それと忌中がその年のどの時期にあたるのかにもよりますが、喪中はがきの準備はしておいた方が良いでしょう。年賀状の準備を周囲の方が始める11月くらいまでには手配をしましょう。もし間に合わない場合は寒中はがきとして、喪中であることの連絡と年賀状を出せないことのお詫びをするとよいでしょう。
忌中に避けること
慶事・祭事
前述していますが結婚式や忘・新年会やお正月のお祝い、また新築祝いも参加を断りましょう。ただし近しい間柄で祝ってあげたい結婚式は、相手の親族などに相談してみても良いかもしれません。
またご自身の結婚式であれば忌明けまで伸ばすののが通例です。
神社への参拝
神棚へ紙を貼るのと同様、死は穢れとされているのでこの時期の参拝はその穢れを持ち込むことになりますので避けましょう。神社でのお祭りへの参加や七五三も同じですが、七五三はその年限りとなるものなので神社の宮司さんに相談してみるとよいでしょう。
似ていますが、慶事でもなく神事でもないことからお盆などでの先祖への墓参は問題ありません。
忌明けに行うこと
香典返しを送る
葬儀時に会葬礼状とともに渡している場合は必要ありませんが、そうでない場合やいただいた香典の額が想定以上だった場合追加の香典返しを送ります。
香典返しは本来忌明けに行うのでキリスト教や神道ではいわゆる四十九日過ぎとは異なりますが、仏教が一般的な日本においては仏教の四十九日過ぎに合わせて送るのが一般的なようです。
神棚封じを解く
神棚があって半紙を貼るなどしていた場合はこれを剥がします。
宗派や地方にもよりますが、仏壇の扉を閉じていたご家庭はこれを開きましょう。
喪中は忌中を含めた1年間
喪中の期間と続柄の範囲
喪中の期間
(今更ですが)喪中は亡くなった家族を偲び冥福を祈る期間のことを言います。
忌中のところで書きましたが、忌とは死の穢れの残る期間で、仏教なら49日、神道なら50日、仏式への当て嵌めで考えていますがキリスト教なら30日。
忌明けで忌中を過ぎ死の穢れから解き放たれますが、故人の死を悼み冥福を祈るのが喪中期間となります。
一般的に故人様が亡くなられてから一年が喪中・服喪の期間となっていますが、実際のところ明確な定義はありません(理由は後述しています)。
結果として現代では「一周忌」の法要までとするのが通例となってきたことから、一年とすることが一般的となっているのです。
喪に服すべき続柄
通常(仏式では)故人様から見て二親等までと言われます。簡単に親等を説明します。
0親等:夫・妻
1親等:父母・子供・配偶者の父母
2親等:故人と配偶者の兄弟/姉妹・兄弟/姉妹の配偶者、祖父母・孫
となります。
親等毎それぞれの親等の服喪期間については明治7年に施行された「太政官布告(だじょうかんふこく)」で厳密に定められていましたが、この法令自体は昭和22年に廃止されたものの現在の仏事慣例に強く影響を残しています。
ただ現代では当時と家族や親族の在り方が大きく変わったこともあり、親等に関係なく一年間というのが一般的となっています。
忌中と喪中の違い
忌中は喪中に含まれますが、故人様がお亡くなりになられてから死の穢れから解放されるまでを忌中とし、慶事や神社への参拝を控える(昔であれば家に篭り世俗との交わりを絶っていました)期間となります。
忌明けの喪中は死の穢れから解き放たれています。喪に服す期間であることからお祝い事への参加など控えるべきことはありますが、過ごし方、慶事や神社への参拝などはご自身・ご家族の考えで行えばよいでしょう。
喪中に控えること
忌明け後であれば宗教的な制約が特にありませんので、お気持ち次第で良いでしょう。ただしお祝い事などは控えめにするのが通例です。
初詣なども問題はありませんが、晴着などでは行かず普段着で行くなど控えめにする場合が多いです。
お正月はお祝い事にあたりますので、忌明けでもお正月飾りは控える、「おめでとう」の言葉を使わない、おせち料理は出さないよう注意しましょう。
またお正月以外の慶事も、忌明け後だからといっても喪中というだけで慶事への参加などを快く思われない場合もありますので、そうしたことが予想される際は事前に相談をされると後々のためにも良いでしょう。
喪中にすべきこと
忌中に行わなければならない事は宗教上の制約から忌中に行っていると思います、ここでは忌明け後に行うべきことについて書いてゆきます。
忌中は四十九日法要の準備など多忙な事が多いと思います。
そうしたことから遺品整理や相続などは四十九日までという制約がないので、こうしたことをするようになる方が少なくないのではないでしょうか。
また時期をみて一周忌の準備もしなければならないでしょう。一周忌はご家庭によりますが親族以外の方の参加を可とするケースもあります、親族でも仕事や学校の都合がありますので、皆さんが参加しやすい日を予め選んで準備を進めるようにしましょう。
また忌中の項で書いていますが、お正月に向けて喪中はがきの準備もしておきましょう。